ママ、最後の葛藤
最後は好きな場所で、静かに見送ってあげようと
心に決めていた。
お家に帰って来れて、ショー君は何だか嬉しそうだった。
でも現実は、そんなに甘いものではなかった。
殆ど自力で食べてくれない、ショー君に
液体スープや、流動系のものをあげていたのだが、
口腔癌は、そんなものさえも、出血の原因になってしまう。
出血する度に、思わず病院へ駆け込みたくなってしまうママ。
輸血しないと、危ない。
でも、連れて行ってしまったら、また入院になってしまうし
チューブだらけの生活を、送らなければならない。
そしたら、更に長い苦しみを与えてしまうのではないか。
毎日が、心の葛藤だった。
ただ、何も出来ず、血を拭き取り、
撫でてあげることしか出来ないのが
こんなにも辛いことだなんて・・・
この時は、自分を責めることしか出来なかった。
もっと早く気づいていれば。
あの時、大学病院へ連れていく決断をしていたら、助かったかも。
逆に、一番はじめに見て頂いた先生の言う通り、
自然のままにしていれば、ここまで苦しめることは
なかったのではないか。
自問自答の繰り返し。
2年経とうとしている今ですら、本当は何が正しかったのかなんて
分からない。
チャーはというと、昼間はダイビングショップで
預かってもらっていた。
夜は、帰って来ていたのだが
何かを感じていたチャー。
先輩の側へ行こうとしなかった。
8月20日 表に出たいというので少しだけ
一緒に表の空気を吸わせてあげた。
8月21日 膝に乗りたいというので、ママの力が尽きるまで
こうしていた。
しかし、前のような重みが感じられなかった。
7kg近くあった体重も、4kgを切っていた。
ショー君が、初めて我が家に来た時と
同じ体重になっていた。
8月24日 突然夜中に泣き出した。
ショー君は、全く鳴かない子だったので
初めてこんな声を聞いた。
最後の力を振り絞るように、外に出してくれとせがまれた。
いよいよだと思った。
今まで、飼ってきた野良ネコ達も、
最後は身を隠そうとしていた。
ゴメンネ。ママは、出してあげれなかった。
このドアを開けたら、このまま行ってしまう。
そんな気がしてならなかった。
8月25日 表に出してあげれない代わりに
ベランダで気分転換させてあげる。
9月1日 久し振りに、チャーが先輩の所へやってきた。
真夏にも関わらず、何故かチャーまで毛布で寝ている。
そしてこれが、ショー君とチャーの、最後の時間になってしまった。
きっとチャーは、本能的なもので、全て分かっていたんだと思う。
最後の二匹の時間を、邪魔しないようそっとしておいた。
そこからは、お風呂場や押し入れなど、暗い場所を転々とし
もう水分すら取らなくなってしまった。
写真もここまで。
これ以上のショー君を、カメラに収めるだけの
余裕など、もうママには残されていなかった。
そして
9月9日早朝
誰にも、看取られることなく行ってしまった。
切なかった。
最後位、何で見送らせてくれなかったのか。
9月に入ってからは、深夜危なそうだったので
ママは3時過ぎまで、いつも起きていた。
この日も、寝たのは4時近く。
その時は、まだ息をしていたのに。
パパが起きた6時には、もう冷たくなっていた。
たった数時間の間に、行ってしまったショー君。
頑張ったね。もうゆっくり寝てね。
そんな、ありきたりな言葉しか、かけて上げれなかったママ。
未だに、このたった2時間が心残りで
悔やんでしまっている。
読んで頂いて有り難うございます。